大学の研究室では、『鉄筋コンクリート構造物の地震応答性能』で卒論を書きました管理人のコンドーです(本当)。マンションの耐震性能について昨今話題になっているのは改めて私が言うまでもないので、その辺は割愛いたします。今日考えますのは、マンションの耐震
改修(耐震診断・耐震補強)を実際に管理組合の方がやろうとすると、どういった流れになるのかという事です。
この耐震診断とかいう話は、例えば建築士の設計事務所に話を持ち込んでも、構造計算を中心にやっている事務所以外では全く話になりません。でも、耐震診断・耐震補強設計というのは大きいお金が動きますので、話を持ち込まれた設計事務所はお客さん(管理組合の役員)を逃さないように「ウチでもできますよ。任せてください。」と言うでしょう。しかし、実際は構造系の設計事務所に下請(協力事務所)に出すでしょうね。
ではさっそく
全体像から追ってみましょう。
まず、耐震診断から耐震
改修(耐震補強)工事に至るまでのフローです。

1、耐震診断をします。その結果、補強が不要でしたらメデタシメデタシです。
2、補強が必要な結果が出たら、耐震
改修設計(耐震補強計画)をします。
3、
改修工事費があまりに高額だったら、
建替えと費用対効果を比較します。
4、
改修して住み続ける事になったら、いよいよ耐震
改修工事の実施です。
それでは続いて、耐震診断〜耐震補強設計〜耐震補強工事までの各段階について大事なことをコメントしていきます。
最初は
耐震診断です。ここではまず、耐震診断を契約する前段階で、管理組合の方針について確認しておきたい事があります。
- ・悪い数字が出た場合の資産価値の減少(風評被害)は覚悟してください。
- きつい話ですが、実際にある話です。現行の構造基準より低い数字が出れば、中古でそのマンションを買おうとする方は減ります。皮肉な事に、もっと古いけど耐震診断をしていない物件に流れるかもです。
- ・修繕積立金の積立額に合わせた改修は無理です。
- これもきつい話ですが、大規模改修の時にも役員さんから出される話です。工法を選ぶ・工種を削るなどしてコストを抑えるのは当然ですが、耐震診断によって出された数字が低いほど耐震補強工事は高額になりますので、耐震診断の前の段階で工事費のお約束はできません。
特に前段について補足ですが、一般に1981年6月以前に着工された建物は現在より緩い構造基準で設計されていますので、耐震性能が現在の水準に達していたらラッキーという位なのです。しかし、私の知っているクライアントでも「(耐震性能で)悪い数字が出ると困るから耐震診断はしない」という方はいらっしゃいます。しかし建物の実態は変わらないわけですから、耐震診断をやると決めたらその結果としての耐震補強まで行うか、
諦める保留するか、
建替えを検討するかの判断まですることの腹を決めなければなりません。
一気に説明しましたが、この判断の時点ですでに難しいですね。ですので耐震診断は設計事務所に話を持っていく前に管理組合へのガイダンス的な、建築構造の知識がある人のサポートがあると心強いと思います。ほぼ断言できますが、管理業者のフロントさんにこの辺の知識がある方は皆無です。建築の設計事務所さんでも耐震
改修の経験がある方は1/3以下なんじゃないかと思いますので。
このようにして、まず手始めに耐震診断を行います。耐震診断は構造が強ければ地元の設計事務所でも充分できます。
耐震診断の費用は、静岡県方式とか人件費の積上げによる方式とか複数ありますが、数式とかが面倒なのでここではその説明は省きます。ご興味のある方はメールください。
続いて
耐震補強設計です。耐震診断で残念ながら悪い数字が出た場合です。
これは耐震
改修の設計を行い、建物のどこを補強して耐震性能を上げるかの設計です。
この段階でも設計者が管理組合と相談したい事項があります。
それは、
- ・近々、大規模修繕や増築の予定はありますか?
- というのも耐震改修工事は大掛かりなものになり、一般的に内外装のリニューアルも一緒に行われます。ですので工事費を無駄なく設計するために、アルミサッシを改修しようと予定していたとか、床下の横引きの配水管まで大改修しなくちゃならん時期だ、というのは設計する側も是非知りたい事項です。
- ・耐震改修の公的な評価を得たいですか?
- これが何を意味するかと言うと、耐震診断・耐震補強は自前で勝手にやっても構わないのです。1階のピロティに耐震壁を一枚作るのも立派な耐震補強工事です。そういった任意の耐震診断・耐震補強を行っている建物は、福島県内にもいくつかあると思います。
しかし、公的機関の『お墨付き』をもらう事も可能です。福島県では(社)福島県建築設計協会に耐震診断の判定、耐震改修の評価を依頼します。手数料は診断で10〜20万円、補強計画で10〜30万円位だったと思います。
特に、後段の公的機関による評価を得る事は一度よく検討いただきたいところです。というのも、耐震診断・耐震補強計画を評価されるという事は、学識経験者によるチェックを得られるだけではないメリットがあるからです。
↓公的機関による評定を受けるメリット

公的機関の評価を得ることで(後述の)特定行政庁の認定を受けられるのですが、その認定を受けると上記の表にあるようなメリットがあります。
ここでおさらいとして、認定を受ける場合の耐震診断と耐震補強計画の手続きの順番は分かりにくいので整理します↓

・上段の耐震診断を契約してから判定所の交付を受けるまでに早くて半年程度はかかると思います。
・下段の耐震
改修の方も、耐震補強計画をして評価書を得るまでに半年、内外装の
改修する設計までまとめて認定を受けるのには一年程度かかるんじゃないでしょうか。その間は担当の役員さんは変われないでしょうから大変かもしれません。
続いて、
耐震補強工事の契約に移ります。先ほどの耐震補強設計の時に、どこと設計を契約したら良いかという話をしなかったのですが、そこを含めてお話します。
耐震
改修設計と耐震補強工事の契約の選択肢は、
- ・設計を設計事務所、施工をゼネコン
- 耐震補強に関してはあんまりおすすめでは無いです。なぜかというと、耐震補強の技術というのは、ゼネコン各社が競い合っている分野で、技術の進歩が設計事務所の知識より先を行っているからです。さらにゼネコン各社は補強技術で特許を取っていて(例えば飛島建設のトグル制震工法)しかも多数あるので、そのマンションに最適な工法を設計事務所が提案してこない可能性もあります。
- ・ゼネコン主導(設計も施工も同じゼネコン)
- 意外に良いかもしれないです。それでも設計に入る前にゼネコン各社の提案を受けて評価・比較してから契約するのはもちろんです。ただ注意したいのは、耐震補強は責任施工といって命に関わる大事な工事です。しかも耐震補強以外の工種もたくさんあるので、建築士による第三者監理かコンサルタントを入れるのが大事だと思います。
最後に行政によるサポート(
補助金)について簡単にご説明します。国土交通省では耐震診断も耐震補強も補助メニューを作っていまして、マンションも対象になっているようです。しかし各自治体で国交省補助の事業化は進んでないようです。(福島県内でもマンションへの補助はまだのようです。)あとは自治体独自の財源でも補助事業を行っています。(調査中ですが福島県内では無いようです。
参照:横浜市)東北には1981年以前のマンションは少ないのでしょうが、、、しかし、こういうのは管理組合が集まって提言や要望をしないと行政は動いてくれないでしょうね。
補助金申請の申請者が管理組合の理事長というのは仕方ないのでしょうが、ただ、想像するに実際のところは輪番で今年だけ理事長になられた方が耐震補強工事の補助金を受ける手続きをされるのは、私が考えてもちょっと気の毒です。相手はお役所ですから、一筋縄では補助金はくれません。敵が納得する資料を揃えないと、書類に受理のハンコすらも押してもらえないことは容易に想像できます。
ここ数年、静岡県・宮城県などで話題になっている木造住宅の耐震診断・耐震補強は、住んでる人が一般の方ですし規模も小さいので補助申請や採択は簡単なようですが、マンションとなると申請書類を作るのにもちょっとした手間がかかりますしね。
少し長くなりましたがこの辺で概略の説明を終わります。もっと詳しく説明せい、という方はコメントかメールいただければ調査いたしますのでよろしくお願いします。