いつもお世話になっております、管理人のコンドーです。本日は住宅行政の先進地、横浜市から興味深い
管理規約のモデルが示されているのを発見しましたので取り上げます。
(参照URL)
横浜市まちづくり調整局
横浜市型『小規模マンション対応型」モデル規約』
このモデル規約で画期的なのが、管理者を区分所有者以外の人を想定して条文を
設定している事です。さらには、小規模マンションではそういうのも現実的な解
決策ですよ、と行政側から手を差し伸べています。堅いことを言いますと、「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」で、「国及び地方公共団体は、マンションの管理の適正化に資するため、管理組合又はマンションの区分所有者等の求めに応じ、必要な情報及び資料の提供その他の措置を講ずるよう努めなければならない。(第五条)」となっているものの、実際は大都市圏以外では何も努めていただいて無い状況なので、この横浜市の姿勢には勇気付けられます。
いつものように前置きが長くなりましたが、それではモデル規約(抜粋)のご紹介です。
第38条の2
区分所有法に定める管理者は、総会の決議により定める者若しくは理事長とし、管理組合の業務を統括し、規約、使用細則又は総会若しくは理事会の決議により、管理者の職務として定められた業務を遂行する。ただし、管理者は、第33条に定める業務の委託及び契約に際しては、災害、事故等により人命の安全確保、共有財産の保
全に関して緊急を要する場合を除き、理事長の承認を得て手続きを行わなければならない。
2 管理者は、理事会に出席して意見を述べることができる。
3 管理者は、通常総会において、組合員に対し、前会計年度における管理組合の業務の執行に関する報告をしなければならない。
4管理者は、第54条三号の長期修繕計画(修繕積立金積立計画を含む)に関する案を作成し、またその変更案を少なくとも5年に一度作成し、理事会に提示しなければならない。
(横浜市によるコメント)
理事長は、管理組合の代表、理事会・総会の議長として、意見のとりまとめ等を主に担当するものと位置づけています。また、理事長とは別に、管理者を総会の決議により定める(選任される)者として、管理組合を統括、総会の招集、損害保険契約に基づく請求や法令・規約等違反者への対応、訴訟の原告または被告となるなど、専門性が高い業務等を担当する者としています。
管理者は、法第26条にあるように、共用部分の保存(月々の管理費で賄える範囲内の小規模な修繕等を行うことで、修繕積立金を取り崩す必要がある修繕や分担金を要する修繕は含まない)、集会決議の実行、規約で定められた行為等を行うこととなります。ここでは、契約等に際しては、緊急を要する場合を除き、理事長の承認を得て管理者が手続きを行うこととすることにより、管理者と理事長
とが連携して適正な事務執行が図られるものと考えています。< br>
また、長期修繕計画(修繕積立金計画を含む)の重要性に鑑み、5年に一度は見直しが図られるよう、理事会への案の提出を義務づけたものです。理事会はその提示を受けて検討を行い、理事会決議、総会決議を経て、適切に計画等を見直し、マンションの適切な維持管理がなされるようにしていくことが重要です。
まずこの『管理者』というのはどういう位置付けの人を指すのかというと、区分所有法では、わざわざ第4節に『管理者』という節を設けて法定しています。当該の区分所有法を抜粋します(法律のまんまなので読み飛ばして頂いて結構です。)
(選任及び解任)
第25条 区分所有者は、規約に別段の定めがない限り集会の決議によつて、管理者を選任し、又は解任することができる。
2 管理者に不正な行為その他その職務を行うに適しない事情があるときは、各区分所有者は、その解任を裁判所に請求することができる。
(権限)
第26条 管理者は、共用部分並びに第21条に規定する場合における当該建物の敷地及び附属施設(次項及び第47条第6項において「共用部分等」という。)を保存し、集会の決議を実行し、並びに規約で定めた行為をする権利を有し、義務を負う。
2 管理者は、その職務に関し、区分所有者を代理する。第18条第4項(第21条において準用する場合を含む。)の規定による損害保険契約に基づく保険金額並びに共用部分等について生じた損害賠償金及び不当利得による返還金の請求及び受領についても、同様とする。
3 管理者の代理権に加えた制限は、善意の第三者に対抗することができない。
4 管理者は、規約又は集会の決議により、その職務(第2項後段に規定する事項を含む。)に関し、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。
5 管理者は、前項の規約により原告又は被告となつたときは、遅滞なく、区分所有者にその旨を通知しなければならない。この場合には、第35条第2項から第4項までの規定を準用する。
(管理所有)
第27条 管理者は、規約に特別の定めがあるときは、共用部分を所有することができる。
2 第6条第2項及び第20条の規定は、前項の場合に準用する。
(委任の規定の準用)
第28条 この法律及び規約に定めるもののほか、管理者の権利義務は、委任に関する規定に従う。
(区分所有者の責任等)
第29条 管理者がその職務の範囲内において第三者との間にした行為につき区分所有者がその責めに任ずべき割合は、第14条に定める割合と同一の割合とする。ただし、規約で建物並びにその敷地及び附属施設の管理に要する経費につき負担の割合が定められているときは、その割合による。
2 前項の行為により第三者が区分所有者に対して有する債権は、その特定承継人に対しても行うことができる。
以上のように規定されており、管理者とは(規約に別段の定めがない限り)「集会の決議によつて、管理者を選任し、又は解任することができる」ものです。それでは法で想定されている管理者の立場や業務というものにはどんなものがあるかというと、規約に別段の定めが無い場合は、
・共用部分等を保存し、集会の決議を実行し、規約で定めた行為をする。
・その職務に関し、区分所有者を代理する。
・集会の決議により、区分所有者のために、原告又は被告となることができる。
さらに規約に特別の定めがある時は、
・共用部分を所有することができる。
としています。
次にこれらの条文がどんな意味を示しているか解説します。まず区分所有法には法人化されていない一般的なマンションには、理事長や役員を置かなくてはならないとは規定していません。あくまで理事長や役員は
管理規約によって定められるものです。それでは規約が無い場合や、規約に管理者が定められていない時は、普段理事長さんがやっている仕事をだれがやるのかというと、、、それがこの管理者なのです。
蛇足かもしれませんが、
管理規約も無く総会によって管理者も選任していない場合はどうするのかというと、共用部分の管理の原則として区分所有で定める、
(共用部分の管理)
第18条 共用部分の管理に関する事項は、前条の場合を除いて、集会の決議で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。
これに拠ります。この第18条において、管理は集会の決議でしましょう、しかし簡単なエレベーターの点検や廊下・敷地の清掃、電球の取替えなどの管理行為といった保存行為は区分所有者が単独で行えます、としています。こういった管理者を定めない例はあまり無いのかと思っていたのですが、最近の新築のマンションで
管理規約案を見せていただく機会があったのですが、その規約は「理事長は、区分所有法に定める管理者とする。(標準
管理規約第38条第2項)」の条文が無いものでした。そのマンションは店舗系の区分所有と住居系の区分所有が半々くらいというこの辺では珍しいものでしたので、その辺を考慮されているのかもしれません。
話を戻しまして、標準
管理規約では管理組合の役員を「現に居住する組合員のうちから、総会で選任す。」と限定していますので、標準
管理規約通りでは区分所有者以外の第三者を管理者にすることはできません。しかし小規模のマンションでは「現に居住する区分所有者が少なくて理事長のなり手に困る」というケースや、「輪番で理事長をやるとしても当たる順番が早く回るから負担が大きい」という声は以前から有りました。
その時に安易に管理業務の委託会社に任せきりにするのではなく、実務を担当する『管理者』を定めて、共用部分の管理の主体である管理組合がきっちりやっていこう(しかし理事長の負担は軽減させよう)、という意思がある際にこのモデル規約が有効です。
その横浜市のモデル規約ですが、コメントが秀逸です。とても親切な自治体だと思います。それでは規約・コメントと読みまして感じた事を僭越ながら逐条解説です。
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第38条の2 区分所有法に定める管理者は、総会の決議により定める者若しくは理事長とし、管理組合の業務を統括し、規約、使用細則又は総会若しくは理事会の決議により、管理者の職務として定められた業務を遂行する。ただし、管理者は、第33条に定める業務の委託及び契約に際しては、災害、事故等により人命の安全確保、共有財産の保全に関して緊急を要する場合を除き、理事長の承
認を得て手続きを行わなければならない。
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管理者を置くことも、従来通り理事長が管理者を兼ねる事も可能に幅を持たせています。委託される業務は理事長さんが一般的になさっているものですが、管理者は緊急時を除いて「理事長の承認を得」るというのが原則なんですね。
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2 管理者は、理事会に出席して意見を述べることができる。
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なるほど。何となく雰囲気として管理者は理事長のサポート役で、理事会の実務担当という位置づけが見えてきました。委託先の管理会社は甲の求めに応じた理事会議事に係る助言、資料の作成をしてくれる契約が一般的と思いますが、それに近いというかより積極的に意見を述べるんだという雰囲気を感じます。
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3 管理者は、通常総会において、組合員に対し、前会計年度における管理組合の業務の執行に関する報告をしなければならない。
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前項の解説の繰り返しになりますが、委託先の管理会社は甲の求めに応じた総会議事に係る助言、資料の作成をしてくれる契約が一般的と思います。しかしこの項では「しなければならない」とあり、いよいよ管理者は管理組合から受託された実務担当というポジションがはっきりしました。
ここまで来たら管理者に善管義務を付した方が良さそうです。この管理者業務はおそらく金銭の発生する委託契約になるのでしょうから、「第5項 管
理者は、善良なる管理者の注意をもって第1項の業務を行うものとする。」のような項が必要だと感じます。
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4 管理者は、第54条三号の長期修繕計画(修繕積立金積立計画を含む)に関する案を作成し、またその変更案を少なくとも5年に一度作成し、理事会に提示しなければならない。
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この項は、管理会社を管理者に設定する場面を想定しているのか、管理会社とは別に管理者が長期修繕契約(案)を作成させることを想定しているのか不明です。前者の場合は管理組合の考えによっては項自体を省くことも可能に思いますが、長計(長期修繕計画)の重要性を鑑みれば後者のように考えて管理者から長計の対案をここで得るのがオススメです。古いマンションでは管理業務の会社との委託内容に長計が含まれていない場合もありそうです。その場合はこの項は長計を得るために外せない項目となります。
続いて、この管理者の業務はどこに委託したら効果的なのかを考えます。結論からいうと、マンション管理のコンサルタントさんや独立系のマンション管理士がベストだと思います。管理者業務を業務内容に掲げるコンサルタントさんは実際有りまして、
宮城県マンション管理士会にはその記載が有ります。
業務報酬基準表では、基本料金150,000円/月(1〜50戸)*50戸を超える場合は3,000円/戸増し とあります。15万円という金額から察するに、対象としている業務内容は隔日での日勤のような相当な業務量ものなのかもしれません。機会があったら問合せしたいと考えております。
もしもですが、仮に自分が管理者業務のお話を頂いたら、と考えますとマンションの管理組合の一般的な顧問業務(
理事会・総会出席、アドバイス)の相場が月3万円という話や、規約や細則の案の作成等も含めたフルサポートの顧問業務で月5万円というお話を聞きますので、その辺りの金額でやれたらいいなと思います。その業務の中で
理事会や総会支援の一般的なアドバイス業務は当然行うとして、そこに理事長さんが通常ボランティアでされている手間分をプラスするのだと考えると、その5万円前後の価格帯であれば検討の価値があるとお考えになる管理組合もいらっしゃるのでは・・・というのは甘いでしょうか。
そのような訳で、横浜市の『小規模マンション対応型」モデル規約』のご紹介でしたが、すでにこのような第三者による管理者規定を設けていらっしゃるマンションがありましたら、是非ご感想などをお聞かせください。